2010年度 社団法人 日立青年会議所


2010年度 理事長所信

 
 

 米国の不動産バブル崩壊に端を発した世界的な金融危機、地球規模での環境破壊、私たち人間が、利便性だけを追求し続けた結果、私たちの社会は大きく揺れ動いております。心よりモノを、目的より手段を、過程より効率を優先するあまり、本来、人として持っていた優しさや思いやりを見失い、豊かな生活を求めてきたその裏側で、今まで蓄積され続けた様々な問題が少しずつ身の回りを脅かすようになりました。一方、私たちが住む日立市に目を向けると、市の産業の象徴でもある総合電機メーカーにおける過去最大の最終赤字(20093月期 −7880億円)、産婦人科問題(市内一箇所)や小中学校の耐震化問題(耐震化率28.6% 県内44位)など、地域における問題も山積しております。

 また、地方分権の推進により行政を取り巻く環境も変化し、私たちの地域も大きな変動の中にあります。この大きな変化をチャンスととらえ、不安を抱きつつ光明さえ見いだせないこの不透明な時代に、地域のリーダーたる私たちJCが、物事の本質を見通す見識を身に付け、揺るぎない信念を持ち、傍観者ではなく主体的な立場で行動していかなければなりません。

 私たち一人ひとりの一歩は小さなものかもしれません。しかし、共に歩みだす一歩は大きなものとなります。青年らしく、英知と勇気と情熱を持って力強く初めの一歩を踏みだし、明るい豊かな社会の実現のために邁進していきましょう。志実現のための近道はありません。しっかりとした座標軸を定め、あるべき道を歩んでいきましょう。

 

【強いJAYCEEが強い社会を創る】

 企業において「事業は人なり」とよく言われます。どんな経営でも適切な人材を得てはじめて発展していくもので、いかに立派な歴史や伝統を持つ企業でも、その伝統を正しく受け継いでいく人材を得なければ、だんだんと衰微してしまいます。我々JCに置き換えてみると、諸先輩方達がそれぞれの時代において築き上げた地域からの信頼や、成し得た成果を受け継ぐ現役メンバーの資質が問われてきます。私たちは、諸先輩方がそうであったように地域における真のリーダーにならなければなりません。そのためには、我々JCの普遍的で恒久的なビジョンである「明るい豊かな社会の実現」をメンバー一人ひとりが確固たる信念として共有し、胆識を身に付けカタチにしていくことが重要になってきます。

 「知識を持って見識と成し、見識を持って胆識と成す」。「知識」とは、本を読んだり誰かの話を聞いたりというレベルで得られるものであり、それだけであれば単なる物知りに過ぎません。「見識」とは、知識の事実に自らの経験や考えを通じて得た、物事の本質を見通す洞察力のことです。これを実行し結果を出すのに必要な力が「胆識」です。つまり行動に結びつくものが本当の知識であり、行動に結びつかない知識は本当の知識ではないということです。私たちも有益な知識を得る様々な機会があります。しかし、その知識を活かし行動に移さなければただの物知りで終わってしまいます。私たち一人ひとりが知識だけを持った自己満足の世界から脱却し、全てを自分の家族や会社、そして地域にフィードバック出来る胆識を身に付けることこそが「強いJAYCEE」が強い社会を創る」第一歩となるでしょう。

 

【変革し続ける組織】

 この激しい変革の時代は、存在しているだけの組織や団体はそのうち縮小し淘汰されていく「淘汰の時代」とも言えるでしょう。近年、社会が豊かになるにつれ多くのNPOや民間団体が生まれ、私たちJCはその存在意義を問われています。私たちは、組織に安住の地を求めたわけではなく、存在することだけが存在目的ではないはずです。守るものは守り、変えなくてはいけないものは積極的に変えていかなくてはJCそのものが淘汰されていくでしょう。

 日々変化する社会状況の中、私たちJCが理想として掲げる「明るい豊かな社会」も、それを実現させるための手段は刻々と変化しています。それは同時に、私たちのJC運動も変えていかなくてはならないということで、JC運動には終わりがないということです。諸先輩達は、時代時代に合わせて組織を積極的に変革し、今日までの日本を築きあげ、時代に先駆け、常に「今何をすべきか」「あるべき姿は何なのか」を自問し、既得権益にとらわれることなく利他の精神をもって行動して参りました。未来永劫、創始の志を次代に引き継いでいくためには、現在の組織や事業のあり方など制度疲労をおこしているものは大胆に変革し、魅力ある組織づくりを目指して参りましょう。

 

【高い志溢れる未来のJAYCEE

 昨今、多くの青年会議所が会員の減少に悩まされており、私たちのLOMも例外ではなく、2010年度はLOMの中核を支えてきた16名のメンバーが卒業します。現在の厳しい経済状況もありますが、会員の減少はまさにJC運動に対する社会の評価でもあり、我々の最も分かり易い成果ではないでしょうか。まさに、会員拡大運動はJC運動そのものであり、担当委員会に任せきりにするのではなく、最重要課題であるということをメンバー一人ひとりが再認識し、LOM全体で取り組んでいかなければなりません。そのためには、自分自身を魅力溢れる人間に成長させ、JCの魅力をちゃんと理解し伝えられるような真のJAYCEEになる必要があるでしょう。未だ見ぬ未来の志高き仲間との和を繋ぐのは、他でもない私たちJAYCEEなのですから。

 

【衆知を集め未来を切り拓く】

 2009年度、日立市は市制施行70周年を迎え新たな第一歩を踏み出しました。今までの政府依存型、行政依存型の社会から市民主導型の地域運営が推進される中、私たちJCが担う責務は非常に大きなものとなって参ります。市民からの信頼と負託に真正面から応え、5年先10年先の日立市のグランドデザインを描き、成長し続ける地域を創造していかなければなりません。そのためには市民一人ひとりが、そして何よりも私たちJAYCEEが今以上に郷土を愛し、郷土の歴史、伝統、文化、観光を熟知し地域の抱える問題に耳を傾け、地域運営に積極的に取り組んでいかなくてはならないでしょう。そして一人ひとりが地域のリーダーだという気概を持ち独立自尊の精神で信念を貫くことが大切になります。

 近年、「JCしか出来ない」から「JCだから出来ない」となっているように感じることがあります。JCとして過大なプライドを持ち過ぎ、本来持ち合わせているはずの無限の可能性に自ら枠をはめ、失敗を恐れるあまりに事業をやるための事業になってはいないでしょうか。青年として固定概念にとらわれない大胆な発想力を最大限に発揮し、失敗を恐れることなく行動して参りましょう。新しい時代への道を切り拓くのはいつの時代も私たち青年であります。未来の日立市を真剣に考える人々の衆知を集め、新しい地域コミュニティを創造し、活力に満ち溢れた日立を築きあげましょう。

 

【身を以って範を示す】

 毎日のようにマスメディアを賑わす事件は、低年齢化、無差別化、凶悪化し、地方には縁の遠かったものが当たり前のように身近で起こるようになりました。これは誰のせいでしょうか。少なからず家庭環境に原因はあるとしても、私たち大人が作りだした現在の社会にも大きな責任があるのではないでしょうか。素直な子ども達は私たち大人の社会が抱える問題を、素直にそのまま映し込み成長していきます。悲しいことですが、子ども達は私たち大人の社会を映しだしているのです。

 私には小学生の子どもが二人います。目に入れても痛くないほど愛おしく私の生き甲斐でもあります。しかし、今の社会の中では、いつ自分の子どもが事件の加害者になるとも限りません。今、私たち大人が立ち上がり、(いにしえ)の日本人が持っていた優しさや思いやり、感謝の心といった道徳心を身を以って実践し、範を示すように努めなければなりません。この国の次世代を担うのは子ども達です。私たち大人が間違った道に進めば、子ども達も間違った大人へとなるでしょう。本気で国を、地域を、そして子ども達を愛しているのならば、本音で、本気で子ども達に語りかけましょう。

 

【戦略的な情報発信】

 我々の運動の目的や理念を地域に幅広く認知して頂くためには、効果的な情報戦略が不可欠であり、私たちが果たすべき社会的役割や市民の信頼と負託に応えるためには、対内に向けた情報発信のみならず、地域との連携強化を目指した情報発信を積極的に取り組んでいく必要があるでしょう。そして、広報案件ごとに広報対象を明確にし、「誰に」「どのような情報を」「どのような手段・ツールで」ということを常に意識し、広報は担当委員会のみの領域という考え方ではなく、メンバー個々がJC運動の目的や理念をよく理解した上で共に情報発信を行っていかなければなりません。また、行政や各メディア、NPO団体との良好な関係を築き、私たちのJC運動の目的や理念を幅広く普及させ想いを共有することにより、「明るい豊かな社会の実現」を加速させていきましょう。

 

【おわりに】

 自分自身の精一杯は自分にしか分かりません。時には仕事や家庭のことで、どうしても活動出来ないことがあるでしょう。しかし、それが仲間に恥ずかしくない精一杯であれば、きっと仲間は助けてくれるでしょう。大事なことは自分自身に負けないことです。人としての魅力は何事にも精一杯やることによって生まれてくるものです。

低いハードルなら練習をしなくても誰でも越えられます。高いハードルだからこそ、それを超えるのだという強い意志と、いつか超えることを信じて、失敗しても繰り返し努力する気持ちが、夢をカタチにしていくのです。低くしたいと思う気持ちを鬼にして、誰のために超えるのか、なぜ今超えなくてはならないのかを考えて行動して頂きたいと思います。勇気を持って40歳までの限られた時間を共に楽しみながら活動していきましょう。